こんにちは、エンジニアの村本です。 本記事では、Rodin Gen-2の技術的進化についてご紹介します。
次世代3D生成AI「Rodin Gen-2」その進化と可能性
3D制作は、これまで専門的な知識と膨大な時間を必要とする分野でした。しかしAIの進化により状況は一変しつつあります。特にDeemos Tech(ディーモス・テック)が開発した最新の3D生成AI「Rodin Gen-2」は、これまでのツールとは一線を画す存在です。
Rodinとは?
AIによる3D生成エンジン
「Rodin」は、Deemos Tech(ディーモス・テック)が開発した テキストや画像から直接3Dモデルを生成することに特化した生成AIモデルです。 同社が運営する Hyper3D プラットフォームを通して提供されています。
対応する入力
Text to 3D:テキストプロンプトからアイテムやキャラクターの3Dモデルを作成
例:「wooden chair with cushions」と入力すると椅子の3Dモデルが生成されるImage to 3D:1枚の写真やイラストから立体的な3Dメッシュを生成
例:ぬいぐるみの写真 → 3Dプリント可能なモデル
出力形式
GLB, OBJ, STL, FBX など、ゲーム・AR/VR・3Dプリントなどに利用できる形式でエクスポート可能。
技術的特徴
- ディフュージョンモデルをベースにした生成AI
- 生成後に「リメッシュ」「AIテクスチャリング」「最適化」などを自動で実行
- フォトリアル寄りからスタイライズ寄りまで幅広く対応
他の3D生成AIとの比較
サービス / モデル | 入力方法 | 出力の特徴 | 強み | 弱み |
---|---|---|---|---|
Rodin (Hyper3D.ai) | テキスト・画像 | GLB / OBJ / FBX / STL など汎用3D形式 | 画像からの3D化が簡単 ワンクリックでリメッシュ&テクスチャ生成 無料で試せるWeb UI |
複雑な構造物は精度が落ちやすい 人間キャラは粗くなることが多い |
Luma AI | 写真や動画(複数枚) | 高精細なNeRF/3Dキャプチャ | 実物を撮影して忠実な3D化が可能 iPhoneでスキャン感覚で利用可能 |
テキストからの生成は対応していない モデル編集性が低い |
Tripo AI | テキスト・画像 | 高速メッシュ生成 | テキストからの3D生成が非常に高速(数秒) ゲーム用小物のベースに便利 |
モデル解像度や質感が粗め 高度なテクスチャは別途必要 |
Rodinの位置づけ
- Luma AI → 実物をスキャンして忠実に再現するタイプ
- Tripo / その他 → ゲーム開発者が使う「ラフモデリング」タイプ
- Rodin (Hyper3D.ai) → その中間で、「2Dから立体を素早く作る実用的なWebツール」
つまりRodinは、クリエイティブの出発点(ゲーム小物・プロトタイプ・教育用)やエントリー層・中小企業でも使いやすい低コスト環境というのが最大の強みです。
Rodin 1.5の実力を確認
現行版であるRodin 1.5の生成能力を確認してみます。
2D画像→3D生成
- 入力画像:
- 生成結果:
Rodin Gen-2の主な改良点
1. メッシュ品質の向上・クリーンな表面
Gen-2では、より滑らかでシャープなメッシュ生成が可能になったとされています。以前よりも表面の荒れが少なく、ディテールも引き立つ仕上がりへ進化しています。
2. 生成速度の向上
公式発表によると、従来版と比較して大幅な速度向上が図られており、迅速なプロトタイピングやインタラクティブな生成体験に向いた改善がなされています。
3. 高度なコントロール機能の追加
新たに導入された入力制御手法として以下が利用可能になりました:
- Bounding Box ControlNet
- Voxel ControlNet
- Point Cloud ControlNet
これらにより、生成する形状やレイアウトに対しより細かく制御できるようになった点が注目されます。
4. モデル編集・調整機能の強化
Gen-2では、生成後にモデルを回転させて異なる角度での出力確認や、対称性の維持、さらにエディタ内でのリファイン機能などが搭載され、生成→編集→再生成の流れが滑らかになっています。
5. 「Generate into Parts(パーツ分割生成)」機能
これにより、大きなオブジェクトをパーツ毎に生成・構築することが可能になり、複雜な構造を持つモデルの制作にも対応しやすくなりました。
比較:Gen-1.5(従来版) vs Gen-2
機能・性能 | Gen-1.5(従来版) | Gen-2 |
---|---|---|
生成品質・メッシュ | 基本的な立体化、ラフなディテールが多い | シャープでクリーンな表面出力が可能 |
生成速度 | 標準速度 | 大幅な高速化を実現 |
入力制御 | プロンプト重視、制御性は限定的 | Bounding Box、Voxel、Point Cloud による高精度制御が可能 |
編集・リファイン機能 | 外部ツール依存 | モデル内での回転・対称調整・エディタ編集機能を内蔵 |
パーツごとの生成対応 | 単一オブジェクトとして生成 | 「パーツ分割」生成に対応 |
関連研究技術の紹介
Rodin Gen-2の進化を支える関連研究として、以下のような最新技術が開発されています。
BANG
BANG💥: Dividing 3D Assets via Generative Exploded Dynamics
3Dオブジェクトを滑らかにパーツ単位で分解(エクスプロード)する過程を生成的に表現する技術です。
主な特徴: - 大規模潜在拡散モデルをベースとし、「Exploded View Adapter」で微調整 - Temporal Attention(時間的注目)モジュールにより、エクスプロード状態間のつながりを表現 - Spatial Prompts(空間プロンプト)により、分解方法をユーザーが指定可能
応用可能性: - 部品構造の理解促進(設計理解や教材への応用) - 3Dプリントワークフロー(分割された部品を個別印刷後、組み立て) - マルチモーダル連携による自然な対話生成
CAST
CAST: Component-Aligned 3D Scene Reconstruction from an RGB Image
単一のRGB画像から高品質な3Dシーンを再構築する技術です。
主な処理フロー:
- 2Dセグメンテーション+相対的深度の抽出
- GPTベースによるオブジェクト間の空間関係の理解
- オクルージョン対応の3D生成
- 整列(Alignment)によるメッシュ配置
- 物理的整合性を考慮した補正
実用的応用分野:
- ゲーム開発や映画制作
- ロボティクス・シミュレーション
- VR/ARシーン構築
これらの研究技術は、Rodin Gen-2の「Generate into Parts」機能などに応用されており、研究成果と実用的なツール開発の橋渡しとなっています。
まとめ
Rodin Gen-2は、従来版からの大幅な改良により、以下の特徴を実現しています:
- 高速性:大幅な生成速度向上
- 高品質:よりシャープで滑らかなメッシュ生成
- 制御性:ユーザーによる柔軟な制御機能
- 最新技術:研究成果を実用ツールに統合
Rodin Gen-2は、ただのバージョンアップではなく、速度・品質・操作性・表現力の全方位的な進化を遂げた世代といえます。特に以下のようなユーザーにとって有用なツールです:
- ゲーム開発者・プロトタイピング目的のクリエイター → より自然で使いやすいモデルが高速に生成可能
- 教育/アート表現 → 操作が直感的になり、学習やクリエイティブな試作に最適化
- 複雑形状のデザイナー → パーツ単位での制御・生成により、表現の幅が拡張
「専門知識がなくても3Dを扱える」時代を切り拓くツールとして、大きな可能性を秘めています。
カシカでは、AIを活用した3Dモデル生成に関する調査も行っています。 ご興味のある方はお問い合わせください。