バーチャルの情報を現実世界に合成するAR(Augmented Reality:拡張現実感)。映画やゲームの世界に飛び込んだような非現実感が体験できるため、集客や単発のデジタル施策で見かけることが非常に多いテクノロジーですが、実はAmazonをはじめとしたEC大手が大型家具の配置アプリを提供していたり、既に 「実用的なツール」 として使われ始めています。
「もっと自分のECサイトでリッチな体験を提供したい」
「競合商品よりもっと強い興味をもってもらいたい」
「大きさや置き場に関する問い合わせを減らしたい」
「返品を減らしたい」
と考えている方もいらっしゃると思いますが、今、このようなお悩みへの解決策としてARをネット通販に導入するのがとても簡単かつ安価になっているのをご存知でしょうか。
そこでこの記事では、ARのコマースへの導入方法について簡単にお伝えします!
これからARをコマースに導入してみたいと考えている方は、ぜひ記事をチェックしてみてください。
目次
1. ARをショッピングに導入する前に!ARの3つの種類を確認
具体的にARをショッピングに導入する前に、まずはARの3つの種類について確認しておきましょう。
AR=現実世界にバーチャルな情報を合成表示するものだという認識は多くの方が持つようになっていますが、結構いろいろな手法があります。
- 画像認識
- GPS型
- 空間認識型
上記3つの型について、それぞれ簡単にご紹介します。
1. 画像認識型
画像認識型は、カメラが読み込んだ画像を認識し、それをトリガーとして表示するARです。画像認識型のARは、さらにマーカー型、マーカーレス型などに分類されていきます。よく見かける四角のマーカーや自分で描いたイラスト、また顔などにARを表示させることもできますが、どちらにせよ「カメラから読み込んだ画像を読み込んでARにする」方式です。
2. GPS型
GPS型は、スマートフォンなどの位置情報をもとに画面表示させるARです。スマートフォンに搭載されているGPSによって場所を特定し、場所に応じたバーチャル情報などを現実世界に合成表示します。
『ポケモンGo』では、GPS情報によって出現したポケモンをAR表示することが可能です。他には東京都現代美術館『MotNavi』といったローカルのナビゲーションのサービスなど、マイクロな用途でも利用が広がっています。
3. 空間認識型
空間認識型は、スマートフォンに搭載された距離センサー等を利用して立体的な空間情報を利用するARです。画像認識の場合は平面図しか認識できず、画像が光で反射したり隠れたりするとARが見れないこともあります。一方で距離センサー等を利用した空間認識を使うと、実サイズの表現や物体の奥・手前の遮蔽を表現できたりと、非常に立体感のある表現が可能です。
たとえば、部屋に家具・家電をおいて配置シミュレーションをしたり、キャラクターを現実世界に呼び出したイベントを実施したりすることが可能です。
2. ARショッピングとは
ARショッピングとは、このようなARを単に「目新しい体験ができた」「面白いものが見れた」というレベルにとどめずに、より デジタルの購買フローの中に溶け込ませて購買意欲や興味の喚起に役立てて行く手法のこと です。
このARショッピングによって、達成できることは主に以下の3つです。
商品/ブランドに対して興味関心度を上げてもらう
カラーバリエーションのトライアルや、パーツのカスタイマイズ体験などを提供することで、購入に向けた具体的なイメージを持ってもらうことできます。そのような意思決定の支援のみならず、これは商品・ブランドに対する消費時間が長くなるということでもあります。
膨大な情報や広告に囲まれた消費者の限られた時間の奪い合いの中で、いかにその時間をブランドへ振り向けて興味関心を持ってもらうかを考えると、ARショッピングは非常に有効 です。
拡散性を持たせる
自分の写真や動画を撮影する時にARが加わることは、一風違ったコンテンツになるため、よりソーシャルメディアに投稿したく気持ちを喚起します。その投稿が仲間うちで流行れば、それがまた別の多くの人へと拡散する可能性もあります。
購入に向けた不安の解消
特に距離センサー等を搭載した最近のスマートフォンであれば、自分の部屋に実際のサイズで合成表示させて部屋との相性を確認することができます。家具や家電など、ネット通販では一般的に不向きとされる商品でもデジタルのチャネルを拡大していく有効なツールです。新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で、 より色々なものをオンラインで購入しようとすることに前向きになっている今こそ、ARショッピング導入をトライするチャンスです 。
3. ARショッピングを始めるためにおすすめのツール6選
こちらではARショッピングを始めるためのおすすめツールをご紹介します。
物販向けツール4選
Trnio
TrnioはiPhoneやiPadで撮影した写真をクラウドにアップロードし、それを元に3Dデータを作成してくれるアプリです。価格は610円ですが、変に年間サブスクリプションとかではなく買い切りなのでおすすめです。スキャンしたデータはクラウドにアップロードする必要があるのですが、写真のデータが100MBとかに達する場合もあるので通信環境にはご注意ください。スキャンしたデータは3Dソフトで扱えるようにで出力するか 直接カタチスペースへアップロードすることが可能です 。
3d Scanner app
3d Scanner appは3Dデータ生成までの速さが魅力の無料アプリです。こちらも作成したデータは3Dソフトで扱えるようにで出力するか 直接カタチスペースへアップロードすることが可能です 。
Sumerian
SumerianはAmazonが提供するARの制作ツールです。かなり高度なことができますので、できればエンジニアとチームを組んだりして進めると作業が速くなると思います。
カタチスペース
手前味噌で恐縮ですが、カタチスペースは ARのネットショッピング導入に特化したサービスです。写真撮影感覚でコンテンツを制作し、AR化までワンストップでできるスキャン用アプリもあり、無料で始められるのが魅力です。出来上がったARは専用アプリのダウンロード不要で体験できるため拡散性が高く、ソーシャルメディア等をつかった販促にも向いています。専門知識も不要で、エンジニアやCGクリエイターのサポートがなくても一人でできるのもおすすめできる理由です。
キャンペーン、集客向けツール2選
通称インスタは言わずと知れたビジュアルのソーシャルメディアですが、ARのフィーチャがあることはご存知でしたでしょうか。作成したARはInstagram内で公開することができるので、できるだけたくさんのInstagramユーザーの目に触れるチャンスを作り出すというのが主眼となる戦略です。投稿したくなるようなエフェクトを考えて拡散を狙っていきましょう。
Snapchat
Snapchatも独自のARを作成できる開発環境があります。かなり高機能で触りはじめるとドハマりすること間違いなしです。これもSnapchatのユーザーに向けてインプレッションを獲得していくのが主眼となります。海外でSnapchatのユーザーに刺して集客したい等で活躍しそうですね。
4. ARショッピングを始め方5ステップ
ここでは具体的にARをコマースに導入する方法について紹介します。上で紹介したARツールの中には直感的な操作で写真を撮るような感覚で作れてしまうものもあります。
どのような流れで作成するのかを参考にしつつ、自分なりのARショッピングを作ってみてください。
- とりあえずAR作成ツールをスマホに入れてみる
- ガイドに従ってサンプルを作ってみる
- 撮影方法を工夫したりして一つ仕上げる
- ECやソーシャルメディアとの連携を考えてみる
- 公開と改善を繰り返す
1. とりあえずAR作成ツールをスマホに入れてみる
ARショッピングを始めるには、まずは制作ツールを入れて触ってみましょう。上記で紹介した以外にも様々なツールが存在しますが、まず試してみようというならやはり無料で直観的にお試しのできるカタチスペースがおすすめです。ぜひお試しください。
2. ガイドに従ってサンプルを作ってみる
カタチスペースやTrnioであればスマホアプリで ガイドに沿って撮影するだけでARコンテンツが作れてしまいます 。その他、SumerianやUnityといった技術者とのコラボレーションを前提としたツールであれば必ずサンプルが同梱されているのでそれらを使ってまず試してみましょう。
3. 撮影方法を工夫したりして一つ仕上げる
新しいことに取り組もうとするときには、 いきなり素晴らしいものを作ろうとしないことが重要 です。
慣れていない・知識のない状態で、その上かっこいいクリエイティブで誰しもを感動させるものを作ろうとしても、それはうまくはいきません。挫折の原因となってしまいます。
プランニングの段階では高い完成度を想像してしまいますが、最初はとりあえず完成させることを目標にして、できる範囲で作っていくようにしましょう。MVP(Minimum Viable Product)の考え方を大切に。あとで改善すればいいのです。
4. ECやソーシャルメディアとの連携を考えてみる
1つ仕上がったら、サイトやソーシャルとの連携を考えてみましょう。どのようなタイミングでソーシャルに投稿するか、サイトへの流入導線はどうか、他にARを見せられるタッチポイントはないか、QRコードを配布できるプリントメディアは無いか等を検討しましょう。サイトに流入させた後はそこからどう購入ページへ誘導するかも大事です。
5. 公開と改善を繰り返す
最後に作ったARを公開して、データをとっていきましょう。ARを仕掛けた商品とそうでない商品でどのような違いが出るか、また購入したユーザーへのサーベイ等を実施してこのような施策が購入意欲にどのような影響を与えたか、自社独自のデータを持つようにして改善を繰り返していきましょう。
まとめ:自分が使いやすそうなツールでARショッピングを始めてみよう
今回はARをコマースに導入する際のおすすめツールと手順について紹介しました。
最新技術で難易度が高いように感じるかもしれませんが、ツール類が非常に充実してきていて、簡単なものであればWeb運用担当者、企画担当者個人でも手軽にトライできます。
ただし本格的なもの、非常にハイクオリティなものを作るにはそれなりの時間とお金が必要となる場合もありますので、導入したいARのレベルや内容、クリエイティブに応じて専門の会社などに相談するのもよいかと思います。
ARショッピングの導入については、より詳細なガイドブックも無料ご用意していますので、こちらもぜひご参考にしてみてください。